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【社長対談vol.07/JIMOTO】東日本大震災を乗り越えて<6>

 

今野/深松さんの新しい動きは、海外展開も含めてエリアの拡大という印象が強かったんですが、仙台市内でアクアイグニスを建設されるということで、そのきっかけはなんだったんですか?

 

深松社長/震災当日、建設予定地の藤塚で仕事をしていたんですよ。それも堤防の、海の目の前で。あの日は当社の土木部長と安全部長が社内検査のために現場に行っていました。現場を離れようと思った瞬間にグラッと揺れて、みるみる亀裂が入り、「これはまずい」と逃げました。逃げるとき、ちょうど藤塚の集落の真ん中を通ったら、地元の高齢者の皆さんが井戸端会議をしていて、「いやー、すごかったね」なんて話しているんです。

外では大津波警報が流れていて「津波が来るから逃げなきゃだめだ!」と言ったんですが、「仙台に津波が来るわけがない」と皆さん逃げなかったんです。結果、たくさんの方が亡くなりました。それがもう強烈な記憶で…。その後、藤塚のがれき撤去もかさ上げ道路整備も当社で行いました。だから、この場所を何とかしたいという想いはずっとあったんです。

 

アクアイグニスの本社は三重にあるんですが、アクアイグニスの立花社長とはもともと友達でした。
震災当時、会議室でおにぎりを握り、社員にはそれを持って現場に行ってもらっていたんですが、3日で持ち寄ってきた米もなくなり、渡すものがなくなってしまったんです。社員からは「社長、腹が減ったら戦はできません」と言われて、そのとおりだよな…と困り果てていました。

でも、震災から4日目、福島が原発で大変な状況になっているときに、立花社長が食料と燃料を持って来てくれたんです。彼には一生頭が上がりません。

三重のアクアイグニスには年間200万人が来ていて、今や地方創生の要です。だから、復興が終わりかけている仙台にも来てくれと頼みました。立花社長に講演に来てもらい、その資料を持って自治体のところに行き、これだけの来場者数が見込める施設が来てくれる、どこか良い場所はないかと相談しました。計画を作って提出し、去年の3月に許可をいただいてから1年かけて開発地許可を取り、今年の4月から造成工事をして、先日着工。2022年春にオープン予定です。

 

2022年4月開業予定のアクアイグニス仙台公式サイト

 

立花社長からは、「プロデュース契約としてアクアイグニスの名前とレシピを送るので、運営は地元でやってくれ」と言われたんです。だから運営はすべて地元企業で行います。アクアイグニス仙台の運営会社は「仙台reborn」という名前にしました。

私はカラオケが大好きなんですが、震災後、行きつけのお店から「今日から開ける」と連絡があり、すぐに向かいました。そのお店のママは山元町出身で、実家も、親が経営するお店も流され「独立しようと思うのだけど、店の名前は何が良いか」と聞かれたとき、私は即答で「リボーン」と答えました。

「私は絶対に仙台を元通りにするから」と。そんな訳で、そのお店の名前は「リボーン」になりました。それが「仙台reborn」にも繋がっています。

いつまでも後ろを向いてはいられませんから、未来に向けて、藤塚を再生して賑わいを取り戻したいと思っています。

 

今野/すごく共感できます。何事も、まずはできる人が少し一歩前に出るしかない。その姿を見て、自分も頑張ってみよう、一歩進んでみようと、輪が少しずつ大きくなっていくのが理想ですよね。

大きな被害があったエリアに目に見える施設ができるというのは非常に大きな動きだと思っています。

特に、仙台の東部エリアはまさに「再生」のシンボリックな存在であるべきですし、開発用地という視点でも、荒井や荒浜といった沿岸部を含めた東部エリアの開発が次の一手だと思っているので、とても注目しています。

 

深松社長/ただ、運営は当社でも経験がないものですから、これからそれを担える人材も採用して、みんなで作り上げていこうと思っています。

今、東北学院大学の学生にアクアイグニスでのイベントを考えてもらっているんです。長く愛される施設にするためには、今の20代に使ってもらう必要がありますから。みんなに愛される施設になってほしいですね。

 

今野/我々も六丁の目に工場がありまして、当社にとって大事な印刷をこれからも守り続けるために一昨年新しく移設をしました。そして、旧工場の跡地をクリエイティブに関わる人間たちが集いながら、新しい価値を生み出す「INKS」という施設に生まれ変わらせようとしています。

地域活性化のためには人が集う場所が必要ですが、我々は本業に近い領域で集客施設を作るつもりです。一般の方々が多く集う施設と連携しながら、我々の広報宣伝のノウハウや、観光開発事業で造成した新たなツーリズムと絡ませて、東部エリアの活性化に寄与できればと思っています。

 

深松社長/そうですね。例えば、アクアイグニスには温泉があるんですが、名取のサイクルセンターと鳥の海にも温泉がありますよね。

でも、こちらには宿泊施設がないので、タッグを組む話が出ています。温泉を巡るスタンプラリーを作って、水族館や松島離宮も含めて回遊する仕組みを作りたいです。単体で動いても限度がありますし、地域のみんなにメリットがある仕組みを作った方が良いですよね。

 

今野/1点だけが盛り上がればいいのではなく、お金が落ちる仕組みを作りながら、点と点をつないで面にするという考えは、今まさに当社も考えているところです。

例えば今、定禅寺通り活性化検討委員会に関わらせていただいているんですが、地元の人が頑張っている定禅寺・国分町エリアに、仙台駅から日常的に人が流れないことが課題になっているんです。定禅寺通りの価値を高めながら、人を動かす取り組みへの挑戦を始めています。

そのエリアをもう少し広げて、仙台駅や仙台空港など、交通のハブになるところから沿岸地域を周遊する動きに、INKSも含めて、人が仙台市内を動いていく仕組みを作っていきたいですね。

震災の記憶は伝えていきつつ、アクアイグニスはそこに留まらずに前に進むための施設だということがよく分かったので、期待値がさらに高まりました。これからもぜひお話を聞かせていただきたいです。本日はありがとうございました。

 

深松社長/こちらこそ、ありがとうございました。どうすれば仙台を盛り上げていけるか、これからも地域のみんなで考えていきましょう!

 

 

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関連サイト

深松組ホームページ

Credit

Creative Director & Designer/ 田向 健一
Interviewer & Writer / 上和野 佐恵

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