子育てをブランクに感じる女性が誇れる自分で一歩を踏み出す。当社のダイバーシティ経営を土台としたカレッジ開発。
2023年6月に事業化した、子育てブランク女性のライフキャリア磨き合いカレッジ「ハハルル」。
「ハハルル」では、子育てによって仕事のブランクがある女性に向けて、ライフキャリアを仲間とともに磨き合うカレッジプログラムを提供。自身の隠れた強みである「名もなきスキル」や「仕事の価値」を見つけ出し、コミュニティの力も借りながら、様々なワークを通じてキャリアビジョンを可視化していきます。女性のキャリア支援のプロのサポートを受けながら、企業の実務家やロールモデルからのインプットも得ることで多様な視点も身に着け、働く自信をつけて社会に踏み出すための一歩を後押しします。
▼推進メンバー
(写真左から)
・メディアクリエイション部 プランニングチーム 主任 浅川 真穂
・コーポレートデザイン部 人材・組織開発チーム 課長 西村 聡美
・コーポレートデザイン部 取締役 今野 彩子
・メディアクリエイション部 執行役員 門脇 佐知
・メディアクリエイション部 プランニングチーム 課長代理 若木 麻里
・メディアクリエイション部 部長補佐 遊佐 淳
本特集では、この事業開発に携わった社員2名に、カレッジ構想の裏側や事業の今後の展望について話を聞きました。さらに、カレッジを実際にカタチにするにあたり、ともにパートナー講師として生徒を導いてくださった今野奈津子様にも座談会にご参加いただき、事業にどのように共感してくださったのかや、当社へ期待することについてお聞きしました。
目次
1.母たちの力が輝きだした一か月
2.「母たちの力を信じる」を真ん中においたカレッジ構想
3.「名もなきスキル」であるソフトスキル(土台)が企業に活きる
4.パートナー講師とつくりあげた「磨き合いカレッジ」
5.働き方改革15年間の実感値からうまれたハハルル事業
6.東北の企業とともに強くなる
座談会メンバー
母たちの力が輝きだした一か月
浅川:まずは、全6回1か月間超の講座を少し振り返りたいなと思います。
西村:あっという間でしたね。
奈津子さん:短い期間での受講生のみなさんの成長もすごかったですね。
浅川:アンケートでもありがたいお言葉たくさんいただけました。
西村:未来に向けて自分がどうありたいのか、最後に堂々と宣言してくださいましたね。お互いの宣言が知れてよかったとか、応援したいとか、こういうエンパワメントし合えるコミュニティができたのもよかった。
奈津子さん:個人の成長とコミュニティの広がりを感じましたね。
西村:コミュニティの力を借りて学びをよりよいものにするという構想がもともとあり、リフレクションをお互いにしたり、フィードバックをしあうことも取り入れていたけれど、それも母たちがもともと持つ共感力やつながる力があるからだなと。講座はもちろん考え抜いて企画したものですが、狙いを超えて広がっていき、自分の手を離れた感触でした。予想を超えたことが起きるのが、「場」や「コミュニティ」の持つチカラだと実感しました。受講生の皆さん、素晴らしい変化を遂げて修了していかれて、最後はみんな感涙の渦でしたね。
▼カレッジの実際の様子や受講生の方が感じた効果について詳しくは、せんだいタウン情報machicoの特集に掲載しています。
【ハハルル】ママ達の再就職を後押しするプログラム。学びの効果を受講者にお聞きしました。
(外部リンク:せんだいタウン情報machico)
奈津子さん:受講生のみなさんの意欲がすごいと思いました。後半に入っていくと、具体的な仕事探しやキャリアの積み方に関する質問がたくさん出てきましたよね。最後の成果発表会で宣言をしてから、さぁやるぞ!と動き出すイメージをしていたけど、もうみなさん動きたがっていましたね。自己効力感の高まりを感じました。
西村:成果発表も、緊張や不安もありつつ、踏み出すために伝えるんだという気持ちが一番わかりましたよね。事務局としては、場の雰囲気づくりを丁寧にすることを心がけていました。今はオンラインの講座も多いけど、ここでは、悩みや不安、なりたい姿などをリアルに共感しあいながら、自分に向き合う場をつくりたいと思いました。
浅川:そうですね、余計な不安や緊張が邪魔をしないように、親身になって話を聞くことや、雰囲気づくりを意識していましたよね。
奈津子さん:浅川さんが講師と受講生の間にいてくれたからこそつくり出せた雰囲気だと思います。
西村:講師を盛り上げることも大事なんですよね。受講生の現在地や知りたがっていそうなことをしっかり事前に伝えるとか、そういうところを丁寧にできたから、受講生一人ひとり違うけどそれがあることでつながるみたいね。浅川さん尽力してくれました!
浅川:ありがとうございます‥!試行段階のパイロット版でスタッフも一緒にワークをやってみたのもよかったですよね。それによって、受講生にも寄り添うことができるし、講座のブラッシュアップにも活かすことができました。
「母たちの力を信じる」を真ん中においたカレッジ構想
浅川:私は今年2月の入社で、講座を実際にスタートさせる時からのアサインなので、カレッジ構想の背景にはどういう想いがあるのか、そこから聞きたいなと思っていました。
西村:そうだよね。このカレッジの講座の組み立ては私がメインで担当させてもらったんだけど、その時に自分の中でコアとなっていたのが「母たちの力を信じること」でした。この事業の責任者である今野彩子自身も母親であり、目の前にいる周りの母たちをイメージして組み立てた構想だったので、私自身も母親として共感できて。一度組織やキャリアのメインストリームから離れてしまうと、見えない壁ができて再チャレンジが難しいという実態はデータでもありますが、何より周りにいる素敵な母たちからリアルな苦悩な声として聞こえてきます。でも、PTA活動やスポ少、地域活動、ボランティアなど、母たちの力で成り立っているところもありますよね。子育ての多くは自分の思う通りにはいかないものですが、そんな中でも人のために頑張ることができたり、半径3メートル以内を明るくできたりする、母たちの力を輝かせたいという想いが今野にも私にもありました。
奈津子さん:私も講師のお話を頂いたとき同じように感じていて。子育ての中で、母たちは、子供と課題を解決したり、成長を後押ししたり、いろんなアプローチをかけていくわけですよね。その力を企業に活かせるということを考えられているんだなと素直に受け取っていました。
西村:講座を組み立てるときのペルソナを考えるうえで、母たちがどういう想いをもっているのかを知りたいと思いました。当社のメディア「せんだいタウン情報machico」でアンケートをとったり、パイロットプログラムで試行したりしました。そんな中で多く聞かれたのは、ブランクにより自信がない、子育てを優先してきて人に語れるような立派なキャリアがない、という不安の声でした。
キャリアの定義って色々ですけど、このカレッジでは「子育ても含めた人生のあらゆる経験を通じて築いていくもの」と広く捉えることができればと思いました。それでライフキャリアと表現を統一して、このキャリア観を貫いていくことで世界観を作りたいと考えました。
浅川:これを講座に落とし込むところが相当難しいなと思いました・・。
西村:やはり産みの苦しみはあったね(笑)母親でもあり、企業人でもあり、さらに人事で採用を担当している立場として、行ったり来たりしながら考えました。仕事の中では相手の文脈で語れることがとても大事なので、「自分を知る」だけでなく「社会を知る」も加えて2軸の構成にしています。それぞれの軸で多彩なパートナー講師の皆さんに次々登場いただきました。趣旨に共感して前のめりにご一緒してくださり、非常に心強くありがたかったです。受講生だけでなく、色々な形でかかわってくれた講師やスタッフの皆さんにも「よかった」と思っていただけるような姿を目指しています。
「名もなきスキル」であるソフトスキルが企業に活きる
奈津子さん:キャリアパーパスピラミッド※の構想がすごかったですよね。これがあったから軸がぶれなかったと思う。
※当カレッジオリジナルのライフキャリア論。ライフキャリアの要素を分解し、土台を固めながらその上に要素を重ねていくピラミッド構造。その中核には「ソフトスキル」がある。
西村:ありがとうございます…!
母たちが持っているはずの「名もなきスキル」をソフトスキルと表現し、見出していく事を核としました。また、それを活かすための価値観やマインドを土台として言語化することもポイントに置きました。当社も土台として「パーパス」を掲げていますが、根底の志がしっかりあると変化対応力が高くなるんですよね。
たとえば、ライフラインチャートでこれまでの選択や人生を振り返るワークで、自分はキャリアを積めていないと思っていた方が、「これまでの10年間に一切の後悔がないと気づいた、子どもとしっかり向き合うことを選んでよかったと思えた」と言われていて、それはグッときました。こうして自分の選択や経験を肯定できると、また前に進めますよね。
奈津子さん:それぞれにご事情を抱えて子育てをしてきた母たちもたくさんいましたが、みなさん子育て期間の満足度が高い方が多くて、すごくお子さんへの愛を感じましたね。
ブランクがあるからと悩まれている方って、ハードスキルがないことに自信を持てない方が多いんです。だからハードスキルを補おうとしますよね、資格取得もそう。
浅川:ハードスキルはわかりやすいですし、応募書類にも書きやすいですもんね。
奈津子さん:でもそれって面接で発揮できることではないんですよね。西村さんも人事目線で感じられていると思いますが、面接で確認したいことは、ソフトスキルの部分なのかなって。
西村:そうですね。仕事をしていると色々な困難に出会いますが、そのときにどんな選択をする方なのか、どういうスタンスで向き合う方なのか、価値観を知りたいと思って質問をします。ハードスキルは必要だけど、そのスキルを身に着ける努力が続けられるのかどうかは、ハードスキルからは見えないですしね。ハハルル事業にパートナーとして協力してくださっている企業人事の方もそういうところに共感してくださっていましたね。
奈津子さん:ということは、これは社会に出てすぐに使えるスキル(土台)ということになります。
パートナー講師とつくりあげた「磨き合いカレッジ」
浅川:奈津子さんが講師の話を持ち掛けられた時は、どのように受け取ってくださったんですか?
奈津子さん:大事な事業に声をかけていただいて本当にありがたかったです。私、もともと彩子さん※のファンでして(笑)。お話されることが、いわゆる耳障りのいい言葉ではなく、経験からにじみ出る言葉で。以前、ユーメディアさんも登壇された女性活躍をテーマにしたセミナーのファシリテーターをさせていただいた際に、彩子さんになぜ働き方改革に取り組まれたのかお伺いしたんです。その時に、活躍してくれる女性が働き方と仕事のバランスの問題で働き続けることが叶わないことがすごく悔しかったんだと仰っていて。そんな彩子さんの想いの詰まった事業に絶対力になりたいと思いました。
※事業責任者の今野彩子
西村:本当にありがたいです・・・!いくら構想があっても、実際に想いを持ってご一緒してくれる方がいないと実現しない講座でしたので。
奈津子さん:講座を考える際には、ハハルルの色を出すことを意識して、言い回しやデザイン等を考えました。個々の色をだしながらも社会に通用することを、という考え方が新しいと思ったからです。「磨き合いカレッジ」なので、受講生同士が磨き合える空間づくりも意識しました。こちらからはできるだけ簡単な言葉で、イメージとしておりてくる程度でお伝えにして、ワークをしながら、その中で発酵していくことを意識していました。
西村:奈津子さんへ講師のお願いをしたときは、まだお子さん1歳になられていなかったですよね。だいぶ無理を言っているとも思いながら、でもだからこそ、同じ目線で受講生に体験談を話したりして安心感をつくってくださった。奈津子さんからレクチャーしてもらう部分がありながらも、受講生同士の学びを促進するような講座でした。
奈津子さん:母たちは、経験していることがたくさんあるので、場さえつくってしまえば、お互いに教え合ったり分かり合うことができるイメージが前提にありました。母という共通項によって相乗効果が生まれたのかなと思います。
西村:スキルを身に着けてもらうより、自分の中に持っているものを見出す感じですよね。奈津子さんが講義してくださったリフレーミングもよかったですよね。
奈津子さん:自分の短所や苦手なことを書き出して、みんなで肯定的に言い換えるワークですね。双方向にアドバイスが飛び交っていましたね。
第一期プログラムの様子
西村:言いたいことをなかなか言い出せないことが短所だといっている方に対して、それは相手のことを思いやっているからこそなんじゃない?とか。これって普段からいろんなところで人間関係つくっているからかけられる言葉ですよね。
浅川:日常的に自分のお子さんにも同じように接しているのかなと思いました。もともと持っているスキルが活かせるスキルであると気付いていただけたと思います。
西村:リフレーミングは相手の力を借りる必要があるので、コミュニティの力が活きていたよね。
浅川:絆がうまれていましたよね。戦友という言葉が合う感じ。真面目なテーマを話し合える関係ってなかなかできないですもんね。
西村:サードプレイスのようなね。
奈津子さん:人のつながりは今後もどこかでつながっていくと思うので、財産になりますよね。
15年間の働き方改革の実感値からうまれたハハルル事業
奈津子さん:この事業は、ユーメディアさんじゃないとできないことだと思っています。女性一人ひとりが責任のある仕事をされていて、前線で活躍されていていますよね。そういう会社がやることで、世の中の流れがあるからやるではない説得力があると思います。
西村:ありがとうございます。仰る通り、当社がやる意義を考えて取り組んでいます。先ほどの奈津子さんが話してくださった今野の話にあったことがきっかけで当社は働き方改革を2009年からスタートさせ、今はステージが変わってきて、パーパス経営や人と組織の開発に発展させているんですけど、地道にかつダイナミックに積み上げてきた15年間の実感値があります。いろんなバックグラウンドをもつ社員が活力をもって働いてくれているからこそ、事業の広がりも生まれましたし、数字的な成果にもつながっています。それを実践者として地域に広げていきたいなと。最終的には、企業風土や社会の考え方が変わっていかないと、いくら母たちだけが頑張っても…というところがありますよね。組織の土壌やカルチャーは変化を実感できるまでは時間がかかるし、会社さんによって事情は異なるので、変わるのは簡単ではないと思います。でも、こういう会社もあるという事例やこの事業のことを知った会社さんが、うちもやっていきたいと思ってくれたら。そのときに、当社が15年かけてやってきたことを、もっと速いスピードで実現していくためのお手伝いができたらと。自社だけがよくなるのではなく、地域の企業全体でよくなっていきたい、それを推し進められるような展開をハハルル事業でもやっていきたいですよね。そうすると、より母たちが輝ける場所もどんどん増えていくと思っています。
奈津子さん:ユーメディアさんのグループクレド「ちいきのミライ、わたしたちから」という言葉がすごく好きで。一人ひとりが実践しないとこの言葉は達成できないと思うんです。ユーメディアさんに来るときは、この考えをもつ人たちと一緒にお仕事をするんだと思って来ています。
西村:そういう風に当社をみてくださっていたんですね。とても気が引き締まります‥!
奈津子さん:みんなが責任をもって地域の未来をつくる、そのためにいいことをどんどんやっていこうという意欲や前向きさが伝わってきます。
西村:誰かではなく、私たちの地域だから私たちがやっていこうという言葉は震災のときにうまれた言葉だったので、そのように伝わっていてうれしいなと思います。
東北の企業とともに強くなる
浅川:最後にハハルル事業が描くビジョンを西村さんよりお願いできますか?
西村:ハハルル事業は、女性活躍や人材育成・組織開発のフィールドにある事業です。国や様々な団体がそれぞれのスタンスで取り組みが進んでいますが、一番のボリュームゾーンは我々民間企業。女性活躍が叶った未来を民間企業が心からいいねと思わない限り、誰かがやらせているお仕着せのものにしかならないので、当社がやる意義はそこにあると思います。また、民間企業としては、利益を出しながら継続できる事業や枠組みをつくっていかないと、希望が持てないと思うんです。そういう意味でも、ハハルル事業はビジネスとしてしっかり形にしていきたい。今は、ブランクのある子育て女性にフォーカスしていますが、ライフイベントを控えている女性にも届けられると思いますし、先ほどもあった組織の土壌を変える動きとの両輪を回して、複合的な事業にしたいと考えています。民間企業が自分たちの力でそこまでできると、行政の方などとも連携して、より力強く社会を変えていける。さらに、それを課題先進地と言われている東北にある仙台・宮城が、一番女性が多様な活躍ができているという姿になれば、大きな希望になれるかなと。こうした大きいビジョンを持ちいろんな事業展開を考えて積み上げていきたいと思います。
インタビュアー浅川後記
インタビューの中で今野奈津子さんへオファーさせて頂いた時のお気持ちをお伺いしましたが、ハハルル事業に対して深く共感して頂き、私たちと同じ熱量で取り組んで下さったからこそ、最終回を無事に迎えられたのだと思います。
今回のインタビューを通して、講師をお願いした皆様、共催・後援頂いた企業様、皆様にお力添えいただいたおかげで、第一期を無事に終了することが出来た事を、改めて実感しました。
次は第2期。第1期での学びを生かして、さらにブラッシュアップしたプログラムが提供できるよう準備を進めています。
ハハルル事業が、母たちの背中を押す力となること、そして東北の企業の成長に繋がることを目指して、これからもチャレンジし続けます。
Credit
Interviewer/浅川真穂
Writer/阿部ちはる
Photo/杉山愛