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【vol.02】仙台・宮城を盛り上げる地元企業として

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「個別教室のアップル・家庭教師のアップル」でおなじみの株式会社セレクティー。かつて学校教員だった畠山明氏が「生徒一人ひとりに寄り添い、時間をかけて丁寧に接したい」と立ち上げた企業です。経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれた同社の陽光射し込むオフィスで、両社長が和やかに語り合いました。

 

 
今野/畠山社長には、先日、私が会長を務めているPTAで「自己肯定感の育て方」について講演(※1)をしていただきまして、その節はありがとうございました。参加されているのは小中学生の子育て中のお母さんたちが多かったんですが、皆さん、「ありのままの自分でいい」というお話に感激してましたよ。

(※1)※自己肯定感を育む取り組み…子どものやる気を引き出すコミュニケーション法を活かし、小中学生を持つ親の子育て支援として、2012年より新聞社や学校PTAと連携したセミナーや出版を実施。

畠山社長/いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました。お母さん方って、普段とても頑張っているのにお礼を言われることがないんですよね。なのに、様々なことが「やって当たり前」だと思われるとイライラしてきますし、それは子どもにも影響していく。友人とお茶したり、一人で過ごす時間を持つことは息抜きに必要です。そういうのは無駄な時間じゃなくて、セルフケアのために大切なことなんですよ、とお伝えしています。



今野
/私自身は本を読んだりして息抜きの時間を作るように心がけていますが、仕事をする上で周りの自己肯定感を高めること、育ててあげることは大切だなと講演を聞いて改めて思いました。ビジネスにも活かせる考え方ですよね。



畠山社長/息抜きに本を読むのは私も同じですね。企業として利益を出すことは大事ですから、時には社員に厳しいことを言わなければいけない場面もあるでしょう。でも、子どもがお母さんに嫌われたくないのと同じで、社員は社長に嫌われたくないと考えているはずです。そういう時は誰かと比べるのではなく「私はこう思う」と伝えてあげると、その方自身を否定することなく、今野社長のメッセージがきちんと届くと思います。

今野/なるほど、勉強になります。ところで、御社の事業運営でも「お母さん」は重要なポイントになっていますね。


 
畠山社長/もともと個別指導や家庭教師というのは「○人合格!」といった数字にコミットしてきた業界で、理詰めで子どもに接することが多かった。でも、子どもを身近で支えることが多いお母さんたちは気持ちを汲んでほしいし、悩みやどう思っているかを共有したいんです。うちの幹部社員たちも子育て経験のある女性なので、理屈でなく感情を一緒に共有できるような接し方を心がけています。



今野/御社の教室名でもある「アップル」は、ハートを表しているそうですね。

畠山社長/はい、生徒さん自身の思いと、子どもたちやお母さんの役に立ちたいという私たちの気持ちがぴったり調和すると、ハートが2つ重なったリンゴの形になるんです。学校の授業では大勢を相手にしなければなりませんが、一人ずつならもっと細やかな対応ができます。今は教員の長時間労働も問題になっていますし、私たちができることをお手伝いしながら、学校と手を携えてやっていけたらと考えています。



今野
/多様な人材を活かした経営の必要性が言われていますが、今日は特に、女性の働き方について伺いたかったんです。御社は女性スタッフが多いですよね。当社は広告や印刷という仕事をしていることもあって、お客様のご要望を形にしようと夜中まで働くこともあります。「仕事も会社も大好きだけれど、家庭との両立は無理です」と結婚を機に辞める女性が増えた時期があったんです。新入社員として入社してから4~5年経ち、ちょうど仕事を任せられるようになってきた頃にみんな退社してしまう。今から10年ほど前、当時トップセールスだった女性が「出産しても、仕事と育児を両立して働き続けたい」と相談してきた時に、この要望を叶えることが後に続く社員のためにもなると思い、働き方を変える制度を整えようと考えました。いまは、育児と仕事を両立する女性がすべての部門で事業の中核を担い、仕事をしています。

畠山社長/そうだったんですね。うちは今、11ヵ所の拠点があり、多くの生徒さんを抱えています。1ヵ所あたり、社員数名とパートの方々で運営していますが、お母さん方と頻繁に連絡を取ったりお会いしたり、距離がとても近いんです。家庭というのは、社会の最小単位だと思っています。女性たちは夫婦にしろ親子にしろ、小さな社会が上手く回っていくように「家庭を運営」している訳です。その手腕が教室運営にも発揮されているから、彼女たちが話し合って決めたことは、ほぼ間違いありません。子育て経験があるからお母さんの気持ちもわかりますし、教育サービスのプロとして授業や受験、学校のリアルタイムの情報も持っている。双方を含めたきめ細かい対応ができるのは、「子どもたちやお母さん方の力になりたい」という「愛」なんでしょうね。

今野/御社は2014年にダイバーシティ経営企業(※2)として選ばれていますよね。

(※2)ダイバーシティ経営企業100選…「多様な人材を活かし、新しい価値を生み出すことで生産性向上などの成果を上げている企業」を経済産業省が表彰する制度。2014年受賞当時、教育分野では日本で唯一、また東北では初の企業だった。

 畠山社長/はい、そうなんです。リーダーシップにはいろいろな形があると思いますが、私は自分が先頭で強く引っ張っていくタイプではないので、彼女たち、スタッフの持ち味を活かせるようにしたいと考えました。社長からのトップダウンではなく、私がスタッフたちを支え、彼女たちが生徒やお母さん方を支える「ボトムアップ型」の組織です。正社員がパートスタッフを自主的にサポートしてくれるのも、その考えが共有できているからだと思います。また、積み重ねてきたスタッフのスキルが失われてしまうのはもったいないので、正社員でも時短勤務(※3)ができますし、再就職支援(※4)で戻ってきた社員もいます。そういったところを評価していただいたのは、嬉しかったですね。

(※3)短時間正社員制度…2004年から運用を開始。正社員として6時間、4時間の勤務を選択できる。勤務時間ではなく、勤務日数を選択することもできる。

(※4)再就職支援制度…通称「もどりっち」。結婚や出産などで一度退職した後、復職する際に前職の待遇や役職で戻ることができる。短時間勤務、役職の変更なども希望可能。


今野
/我々は4年前から「新しい働き方」をつくろう、と進めてきて、今年から「ワークイノベーション」を実践しようと言っています。初期段階ではシンボリックなロールモデルを作り、まずは産休・育休や時短勤務などの制度を整えました(※5)。子育てに限らず、介護など家庭の事情は誰にでもあります。一人ひとりの状況に合わせてサポートしてきたことで、新しい働き方を考えることが、社員にとってもようやく自分ごとになってきたのかなと思っています。社員が考えたことを実践してきて、働き方を評価されることも増えてきました(※6)が、本当の意味での「働き方改革」ではやっとスタートラインに立ったところです。

(※5)育児休業・時短勤務…子どもが2歳になる月末まで育児休業を取得可能。短時間勤務や時差勤務は小学校就学まで利用できる。男性の育児参画支援として、育児休業の最初の3日間と子どもの看護休暇を有給にした。

(※6)次世代育成支援対策の取り組みなどが認められ、2017年には「プラチナくるみん」認定を受け、2019年には経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定された。

 

畠山社長/今野社長ご夫妻は、我々にとってもロールモデルです。働き方の変革がお二人のリーダーシップで進んでいるところが素晴らしいと思います。うちも「しくみ化」は課題の一つです。ユーメディアさんのように業界を牽引している企業が、地域の会社のモデルになってもらえると地元企業としてはとても心強いですね。



今野/いやいや、こちらこそ心強いですよ。もし我々の会社に共通項があるとしたら、メンバーが自主的に「こうしたい」と案を持ってきてくれるところかもしれません。行動が成果を生み、認められることでまた新しい行動につながっていく。外部から評価をいただくことで自己肯定感を強められるので、いい循環ができていくんじゃないかと思います。



畠山社長
/そうですね。教育サービス業は遅くまで仕事することが多い産業ですが、うちでは遠隔地でも可能なテレワークやリモートワーク(※7)を取り入れて人手不足を解消しているところです。もともと生徒さんが増えていったのは口コミでしたが、今はスタッフも人づての紹介で増やしています。ES(従業員満足)が高いので、紹介されることが多くなってきました。あらかじめ人柄や仕事内容がわかっていますから採用率もあがりますし、その分コストを下げられます。

(※7)※リモートワーク…女性スタッフの家族転勤に伴い、京都・青森と仙台をつなぐリモートワークを5年前から導入。外部PCから本社PCを操作できるシステムと常時スカイプを利用し、遠隔地でも出勤時と同様の仕事ができる環境を整えた。現在、時短スタッフもこのシステムを利用している。

今野/リモートワークは実際に拝見しましたが、画期的で驚きました。うちでも現在、検討を進めていることの一つなので、ぜひ参考にさせていただきます。ほかにも震災遺児への学習サポートなど、CSR(社会貢献)活動をされていらっしゃいますよね。

畠山社長/震災後に、一般財団法人「学習能力開発財団」を設立し、避難所でボランティアによる学習指導を行いました(※8)。
子ども時代を気仙沼で過ごしたこともあり、長期的な取り組みとして今でも震災遺児・孤児への無料学習サポートを継続しています。発達障害など特別なニーズのある子どもたちに対して個別のプログラムを組むこともありますし、富谷市の障害者施設で働く方にアップルグッズを手作りしていただいています。心のこもったアイテムは生徒さんにも喜ばれていますよ。

(※8)学習能力開発財団…子どもたち一人ひとりに合う学習方法を研究するための財団として、2011年6月に設立。個別指導や質の高い学習支援のノウハウを活かし、子どもたちの自信回復と夢の実現をサポートしている。



今野
/社会貢献、地域貢献につながることを色々な形でなさっているんですね。当社では、新生産拠点(※9)で印刷工程の見学受け入れなどを積極的にしていく予定です。未来を担う子どもたちや地域の人々に知っていただくためにも、開かれた会社を目指していきたいと考えています。

(※9)新生産拠点…印刷センターに交流スペースを併設する、六丁の目の新拠点。2018年9月に第一期工事が完了した。


今野
/女性が多く活躍している企業の取り組みとして、参考になることがたくさんありました。一社で殻を破ることも大切ですが、自社だけでやりきれないことは他社と連携していくことも必要だと感じています。事業領域の拡大やCSR活動についても、連携することでもっと活動の幅が広がるだろうし、地域社会に対してもPRできることが増えていくのではないかと感じました。セレクティーさんとも一緒にやれることがあると思うので、今後はビジネスアライアンスを組んでいけたらいいですね。もっと詳しく伺いたかった部分もあるので、またお話できたらと思います。

畠山社長/今回はダイバーシティという共通項でお話しさせていただきましたが、地元企業の先輩として非常に心強く思っています。我々は地域に細やかで幅広いネットワークを持っていますので、それを活かして、ユーメディアさんのように地域への影響が大きい会社と一緒にやれたらと思います。得意分野の教育はもちろん、CSR活動でもお役に立てる部分があると思いますので、仙台・宮城を盛り上げる地元企業として手を携えていきたいですね。こちらこそ、色々とお話を伺えてよかったです。ありがとうございました。

 

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