『主催イベントのアップデート』「戻る」のではなく、「再開」でもなく、「新しい価値」へ
仙臺横丁フェス、バル仙台、仙台オクトーバーフェストなど、ユーメディアが主催するイベントが三年ぶりに復活します。
各イベントの担当者3人に、緊急事態宣言などでの活動自粛期間を経て感じること、主催イベント復活へ向けての意気込みや地域との繋がりなど、秘めていた想いを聞くことができました。
<取材対象者(トップ画像の左から)>
地域ブランディング事業部 地域ブランディング3チーム 課長代理 児玉 龍哉
地域ブランディング事業部 地域ブランディング3チーム 髙橋 宏祐
地域ブランディング事業部 地域ブランディング3チーム 副長 下田 恭平
―今年、ようやく当社の主催イベントが再開となります。約2年前、新型コロナウイルスの感染拡大がはじまった当初は、まずどんなことを思いましたか?
児玉:コロナの収束まで、当面「にぎわい」は必要とされないよな、とは思っていました。
この状況でイベントをやるべきではないと肌で感じましたし。
でも時間が流れていく中で、経済を回せないことで困っている人もいて、リアルイベントをやって欲しいという声も集まりはじめて。「やらなきゃ」という気持ちもあったのですが、やはり社会の目などもあり、これまで開催できずにいました。
下田:世の中的に、様々な経費を削っている状況のなかで、イベントって「絶対に必要なもの」じゃないんだな、と感じました。
そもそもイベントや我々が創出している価値は、生活プラスαの部分なのだということを痛感しました。
今「絶対に必要なもの」ではないけど、でも、豊かな生活や楽しい日常には必要なものだと信じていました。
髙橋:僕は今年入社4年目で、入社1年目の時にお手伝いのような立場で主催事業に参加しただけだったので、イベントが次々中止になってしまう状況はすごくショックではあったのですが、それが出店者や市民の方たちにとって、どれほどの影響力があるかは正直わかっていなかったです。
逆に言うと、今年、仙臺横丁フェス(以降横丁)やバル仙台(以降バル)、仙台オクトーバーフェスト(以降オクフェス)などが開催された後に、それがどのくらい求められていたものかを実感するのだと思います。
地域ブランディング3チームが主体となり、全社を挙げてイベント運営に取り組んでいる。
下田:当社のミッションとして、このまま今年もやらないという選択肢はなかったですね。
うまくいかないかもしれないし、様々な意見もあるかもしれませんが、やれるチャンスがある中でやらないという選択肢は取らないのが我々のスタンスです。
それは、今まで当社が宮城・東北に対して貢献しながら事業を続けてきた自負や責任からうまれるものだと思います。
―2020年の夏にオンラインでのオクフェス・バルの開催がありました。
それはどのような意図があったのでしょうか?
下田:我々のスタンスとして、「世の中ができる状況になるまで何もせず待ちます」みたいな判断をとるべきではないなと思いました。
それと、オクフェスやバルが、忘れられるのが嫌だったという想いもあります。
当社が築いてきたものを繋いでいきたいという気持ちもありますし、それが出店者・生産者の方々のためになるような機会を作りたいなとコロナ禍にずっと考えていました。
児玉:そうですね。
ブランドを維持することもそうだし、イベント自体が廃れると出店者やこのイベントを楽しみにしてくれている人、みんなにとって不利益になってしまう。そうならないために、オンラインで開催をし、持続させたというのが大きいと思いますね。
―オンラインで開催してみて、いかがでしたか?
児玉:内容はやはりライトでしたね。
下田: この当時は、世間的にも、ミーティングや飲み会などがオンラインに移行していった時期で。
そんな中で、いろいろな可能性を探っていった結果、バルではイベントの特設サイトでのワイナリーの紹介、自社メディアであるラジオ3セレクトの「バルをおうちで楽しむプレイリスト」や、地元アーティストによる「バル仙台2020のためのオンラインライブ映像」の公開などを行いました。
オクフェスは、「仙台オクトーバーフェストAT HOME」という名で特設サイトを設置し、ドイツビールと地ビールの詰め合わせを販売するという企画を行いました。そこに、YouTubeで視聴可能な招待コードをつけて、楽団の音楽とか、オクフェスらしいものを楽しみながらコメントし合えるような内容でした。
高橋:オクフェスはYouTubeでのライブ配信でしたよね。バルはいつでも視聴することができる動画にして。
児玉:ライブの時間を指定して配信しましたね。
下田:オクフェスは「みんなで乾杯したいよね」という話になり、ライブ配信になったんですよね。
バルは、「いろんなワイナリーが集まっていて、組み合わせる楽しみとか選ぶ楽しみみたいなものを、オンラインでも担保したいよね」っていう話がありました。
オクフェスはみんなで乾杯、バルは選ぶ楽しみというコンセプトはブラさずにやったつもりです。
左) 2020年のオクフェスは、家飲みスタイルに。特設サイトを立ち上げ様々なコンテンツを配信。 右)出店予定だったブルワリーさんの人気商品をオリジナルセットにし販売も。
児玉:オンラインで開催してみて、やっぱりリアルが恋しいというのが所感としてありました。
仙台市内で乱立し、マンネリ化し始めていたリアルイベントの価値について再確認ができた感じがありました。
下田:僕もそう思います。
オンライン開催で最低限の足掻きはできたと思いますが、オンラインの限界も感じましたね。
―オンライン開催を経て、どんな変化や気づきがありましたか?
髙橋:やはり出店者さんと来場者の方が触れあえる場は、リアルじゃないと生まれないと思いました。
当社がイベントを開催することで、私たちには見えないところで、出店者さんの先にいる人たちの支援にも繋がっていくと思います。
そういったリアルの場、そういう点を増やしていけば、どこかで喜んでくれる人が増えていくと思っています。なので、リアルに触れあえる場を作っていくことは、続けていくべきだと思います。
下田:私がメインで担当するバルはこれからの開催なので現時点での所感ですが、これまで以上にとてもやりがいや使命感を持って向き合えています。
事業として、主催イベントを形にするパワーや人材も揃っているし、自分たちで価値を生み出し実行できる会社だというのを改めて感じています。
児玉:イベントって紙(印刷物)に似ているなとも思って。
テレビとか紙ものって、だいぶ前から「いずれ無くなる」とか言われてきましたが、今もずっと無くならずに残っている。たとえば自分の子供の写真とか、スマホでももちろん見れるんですが、やっぱり紙のアルバムってお金を払ってでも買うんですよ。
人間の本質として、大事なものや必要なものって、リアルなものに変えたいっていうのはあるんじゃないかな。手に触れて感触や質感を感じるような。
イベントもそれと似ていて、人が本気で情報を得たいと思ったり、本気で楽しみたいと思ったりしたときは、リアルなものを大事にするんだと思います。
オンラインでやったけど伝えきれない部分もたくさんあって、逆に、リアルでの価値がなくならないことを再確認できました。そういう意味では、イベントや、形あるもの、空間、共感できるもの、質感があったり手触りがあったり匂いがあるっていうことは、すごく特別なことなんだなと感じました。それがイベントの、リアルの威力みたいなところだと思いますし。
下田:僕はいろいろなことに対して、「いつでもいい」みたいな感じじゃなくなったのはありますね。
たとえばコロナ前は、「今日も明日も」みたいにいつでも飲みに行けたけど、今はそこまで気軽なことではなくなった。それを考えると、以前は「今日を大事にしよう」みたいな感じはあまりなかったように思います。イベントを仕掛ける側として、今日という日をその人にとって大事な一日にできたらいいなと思いますね。
2022年5月、3年ぶりに「仙臺横丁フェス」を勾当台公園市民広場にてリアル開催。多くの来場者でにぎわった。
髙橋:僕は、ずっと自分の中で思っていたことがあって…2人にも言っていなかったんですけど。
下田:え!なに?
髙橋:これまで主催イベントを毎年開催し続けてきたことはすごいことだと思うんですが、一回一回の重要性というか…しっかり考えながら形にしたいなと思って。
オクフェスなどは、ある程度ベースができたところに、新しいことを追加していくという考え方をしてきたと思います。それがコロナの影響で一回ストップして、あらためて今回、一から整理をして開催の目的の部分まで立ち返ることができたように思います。だから初めて参加した僕でも一員になれたと思っています。
もちろんこれまでやってきたことがなくなるわけではないし、そこから学ぶ部分はたくさんあったのですが、イベントの組み立てを「覚える」というより「考える」ところに向き合うことができました。これまでをただなぞるのではなく、どんな人に、どんな場をつくりたいか、毎回、自分なりに目的と向き合いながらやりたいと思っています。
児玉:そこまで考えてたんだ。初めて聞きました。
髙橋:ただ過去をなぞって、担当になったからその場を作るというよりは、しっかり事業としてその場を作り上げるということを考えるきっかけになったと思います。
下田:それを聞いて、自分はそこまで考えてやれていなかったように思うなぁ…。
でもたしかに、今年はこれまでとまた違う向き合い方ができている気がします。我々の価値観や捉え方や考え方の変化でもあるのかもしれないですね。
横丁フェスの会場は“新しい生活様式”を取り入れたスタイルに。アルコール消毒の設置はもちろん、間隔を空けた席の設定、会場をフェンスで仕切り入場規制をするなどの対策のうえで開催された。
―では今後、さらに思い描いていることはありますか?
髙橋:やっぱり「仙台のあたらしい文化をつくる」みたいなことって、テーマとしてあるのかなって。
僕らが考えている「イベントをやる目的」の部分って、来場者にはあまり見えない部分だと思うんですけど、新しい要素を追加しながら継続していき、それが市民の方たちに受け入れられていけば、仙台らしい魅力や文化がおのずと街に根付いていくのかなと思っています。
当社が手掛けている事業が、「これが仙台らしさだよね」と言ってもらえるようになっていくといいなと思っているので、今後も頑張りたいと思っています。
児玉:そもそも、仙台の観光地の少なさは根底としてあると思います。
我々だけでは観光地の開発は難しいですが、楽しみにしてもらえるようなイベントは作れるし、そこにいろんな人が集まって交流できるといいなと思っています。
我々だけでは難しくても、イベントが1 個の大きな点となり、青葉まつりや地元テレビ局さんのお祭りがあったり、毎週そういった楽しみがあると、そのエリアに普段来ない人が来てくれたり、そういう積み重ねが1 つの太い線になると思います。
下田:リアルな体験価値やリアルだからこそ感じられることなど、コロナ禍で気づけたことはたくさんあり、それを踏まえて我々が今後どういう価値を提供していくのかがすごく重要だと思っています。
その価値が何かというと、正直、私はまだ見えていなくて。
まず今年、久しぶりにイベントを開催して、にぎわいを復活させることで、ようやく再スタートのラインに立てると思っているので。
その先に、これまでと違う展望や、次のコミュニケーションの形みたいなものが見えてくるのかなと。それを見つけるためにも、まずは今年、目の前のことを頑張りたいなと思っています。
児玉:コロナ禍でにぎわいを否定されたときは、すごくショックでした。
でも今はにぎわいっていいよねという風になってきているので、やはり否定されるものじゃないんだなと感じています。
イベントってやっぱり特別感とか非日常的な体験とか、「普段の生活プラスアルファの豊かさ」みたいなことを見出す場だってことがわかったので、そこを割り切ってさらに強めていくということは目標の1つとしてあります。
もう一つは、コロナ禍でも切り捨てられなかった部分がありますよね、たとえば食で言えば、“スーパーで野菜を買う”とか。このチームは、地域のリソースを活かしながら、いろんな人と協力しあって、今までなかった事業や価値を生み出すチームだと思うので、困っている人の生活の内側に入っていけるような事業をやりたいですね。
下田:壮大な目標ですね!
でも、イベントに限らず、地域に新しい価値を生み出すチームでありたいです。
髙橋:僕もそう思います。
イベント情報
Kappo presents 杜の都のワイン祭り「バル仙台2022」
日時
2022年7月15日(金)~18日(月・祝)
11:00〜21:00(15日は16:00〜、18日は19:00まで)
会場
仙台市役所前 勾当台公園市民広場
詳細は以下、バル仙台公式サイトよりご確認ください。
https://www.bar-sendai.jp/
当社の自社メディアである「せんだいタウン情報machico」とのタイアップ企画も!詳細はこちら▽
Kappo presents 杜の都のワイン祭り バル仙台2022 開催!おトクなmachicoタイアップ企画に注目♪
仙臺横丁フェス2022
ご来場ありがとうございました。
日時
2022年5月28日(土)、29日(日)
11:00〜21:00(最終日19:00まで)
会場
仙台市役所前 勾当台公園市民広場
詳細は以下よりご覧ください(外部リンク/せんだいタウン情報machico)
【3年ぶりの開催】東北の地元酒を横丁文化とともに味わう「仙臺横丁フェス2022」
Credit
Interviewer/庄司結衣
Writer&Creative Director/杉山愛・岩本理恵
Photo/杉山愛
Designer /伊東梓