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【vol.11】地域のための事業構想

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今野/社長対談は今回で11回目になります。以前から卸町の皆さんとゆっくりお話したいと思っていたのですが、なかなか実現できずにおりました。今回はRIPS(※)の同期である金野取締役にお声がけし、この機会を設けさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

※RIPSとは
東北大学が主催する地域イノベーションプロデューサー塾。地域企業、特に中小企業の経営人材を対象に、革新的なイノベーションによる新事業の開発を促進し、地域における新たな雇用機会の創出と産業振興に貢献できる革新的プロデューサーを育成する事業。二人はRIPS4期生の同期メンバーでもある。




金野取締役/お声がけいただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

今野/御社は瀬戸物や陶磁器の卸売業を中心に展開されていますが、改めて事業の歴史を教えていただけますか。

金野取締役/はい。元々は私の祖父が仙台市青葉区一番町に食器の小売店をオープンしたのが弊社の始まりです。卸売業は、百貨店の藤崎様が食器売り場を新設するタイミングでスタートしました。その後、商工会議所内で卸売団地を作る話が持ち上がり、弊社も仲間に入れていただき卸町に社屋を建設しました。事業の中心は量販店や飲食店、宿泊施設などへの卸売りですが、最近はコロナ禍の影響もあってBtoCのネット通販に力を入れています。

今野/お客様のニーズや時代の流れに合わせて B to B から B to C まで幅広く展開されているんですね。卸町というエリアも、ここ数年で大きく変化していますよね。

金野取締役/そうですね。卸町にとっては東日本大震災と仙台市営地下鉄東西線の開通が大きなターニングポイントだったと思います。卸町は問屋街なので住宅建築にはいろいろな制限があったのですが、東日本大震災を機に規制が緩和され、サンフェスタの向かいに復興住宅と地域の交流スペースが一体となった複合施設「HORUSE(ほるせ)」が建設されました。
また、地下鉄東西線の「卸町駅」ができたことでどんどん人口が増え、マンションやコンビニ、飲食店が次々にオープンし賑わっています。

今野/弊社の本社がある六丁の目もそうですが、元々拠点を置いていたエリアに大きなインフラが建設されるというのはなかなか珍しいことですよね。
そして、卸町協同組合(仙台卸商センター)の皆さんが毎年春と秋に開催している「卸町ふれあい市」も毎回たくさんの人で賑わうイベントかと思います。今年で何回目の開催になるんですか?



2022年10月に開催された「卸町ふれあい市」。今年も多くの方々が来場されていました。

金野取締役/もう30回以上にはなると思います。「出庫市(でこいち)」という名称で、在庫処分のイベントとして始まったものなんですが、組合の青年研究会を中心にもっと「地域貢献」に取り組んでいこうという流れがあり、地域の方と一緒に取り組むコンテンツが増えています。
例えば今年10月15・16日に開催した秋のイベントでは、聖和学園高校の生徒さんをお呼びして吹奏楽や軽音楽の演奏をしていただいたり、卸町光の子保育園と一緒にハロウィンパレードを実施したりと、地域に密着した企画を多く準備しました。卸町で商売をしている企業のほとんどは一般のお客様や地域の方々と接点を持つ機会がないので、イベントに参加してくださる方から「ここにこういう会社があると知れてよかった」と言っていただけるととてもうれしく思います。

今野/地域とつながるいい機会になっているんですね。その一方で、卸売り業は我々が手掛ける印刷業と同じで、必要性や存在意義が問われることが多い業態ではないかと思うんです。組合としてはどのように捉えていらっしゃるんでしょうか。

金野取締役/そのあたりの捉え方は、事業者によって違いますね。今、組合には約260社の企業が加盟していて、食品部会(1部会)、繊維部会(2部会)、日用雑貨部会(3部会)、法人部会(4~5部会)の5部会に分かれています。かなりの大所帯で扱っている分野も様々なので、全体の足並みを揃えるのはなかなか難しくて。コロナによる影響の大きさも、部会によって格差があるのが実情なんです。
とはいえ、組合として連携することでできることもたくさんあるので、卸町ふれあい市などを通じてを取り組みを深めています。





今野/御社の取り組みとしては、卸売業の形にとらわれない新しい事業「ぐい呑みパスポート(※)」がありますよね。こちらの事業はどのように考案されたのですか?

金野取締役/商工会議所主催の商品企画アカデミーというセミナーに参加し、私が事業の大枠を考えました。
元々は、宮城のお土産品をつくりたいと思っていたんです。でも、ただ買って終わりではつまらない。何か体験できたり、形に残る物が良いなと考え、「器を使って体験する」というアイディアにつながりました。


※ぐい吞みパスポートとは
宮城の美酒を楽しむはしご酒イベント。瀬戸屋主催で、宮城の陶芸家・蔵元・飲食店と連携し2021年にスタートした。参加者は3,300円(限定1,000個)でぐい呑パスポート(宮城の酒器<巾着付>と日本酒無料券5枚付)を購入し、加盟飲食店で無料券を使って日本酒を楽しめる。

また別の場では地元の飲食店さんとお話する機会があり、コロナの影響でお客様が全然来ないという声を聴いていたので、“地元の器を使って、地元のお店で、地元のお酒を飲む”体験を提供することでみんなが潤う企画にしました。1年目は16の飲食店さんにご協力いただきましたが、2年目の今年は27店舗に増えて、広がりも出てきたように感じています。

今野/第1回仙台市交流人口ビジネスコンテストの優秀賞を受賞された素晴らしい事業ですよね。
弊社でも、コロナ禍で中止になっていた自社イベントを今年から再開していますが、常に発展させながら継続していくことを大切にしています。従来の仕事のやり方や関わりだけを見ていると気づけないんですが、少し視野を広げると自分たちの周りにはたくさんのステークホルダーがいらっしゃいます。そういった方々を巻き込むことでできることが増えますし、そこからさらに新しい地域課題に気づくこともできる。課題が見つかれば、私たちのリソースで解決しようと、新しいチャレンジが始まる。そうやって挑戦を続けてきた歴史が、今の道につながっているんじゃないかと思います。


2022年9月に3年ぶりに開催された仙台オクトーバーフェスト。多くのお客様がアップデートしたイベントを楽しみました。

金野取締役/そうですね。コロナ禍で卸の中抜きがますます増えている中、自分たちの存在意義や仕事の意味を考える機会が増えました。
弊社の経営理念に、「食住生活文化の向上」があります。そこを深掘りしていくと、私たちが提供できるものは食器だけじゃないと気づくことができるんです。私たちの仕事は、「食器」を売ることではなく、「食文化」を売ること。この食器を使うことで、暮らしがどう豊かになるのか、そういった提案ができるようにこれからも業態にとらわれずいろんなことにチャレンジしたいですね。

今野/我々が行っている業態変革のポイントは、後ろ向きの捉え方ではなく、前向きなマインドにあります。地域が善循環的に発展するスパイラルを生み出すために、これからもイノベーションを起こしていきましょう。






卸町大通

今野/実は今、今後の新しい事業の柱として、地域のクリエイターと一緒に取り組める事業を考えているんです。
仙台・宮城には優秀なクリエイターがたくさんいるんですが、まだまだ世の中にその価値が知られていない人もいます。そんなクリエイターと一緒に新しい価値を生み出していけるようなプラットフォームを作りたいと考えていて。

金野取締役/へ~!おもしろいですね。

今野/六丁の目にある弊社の旧工場をリノベーションして、その拠点をつくろうとしています。単なるコワーキングスペースではなく、いろんな人やもの、情報が縦横無尽に行き交い、付加価値の高いものを世の中に提供できる場にしていきたいなと。これは、2年前に入社した新入社員が入社後半年で考えた企画をベースに構想しているんですよ。

金野取締役/入社半年ですか!素晴らしい。

今野/事業名は、クリエイターから連想される言葉の「博士」と、印刷会社から連想される「白紙」からとって、「HAKUSHI(ハクシ)」とネーミングしてくれました。

金野取締役/クリエイティブな活動をされている皆さんは、作品を発信する場を求めていますよね。卸町には空き倉庫になっている場所があるので、そういった場を活用できたらいいなと思っていたところでした。

今野/いいですね!世の中に新しい価値を生むためには、ステークホルダーの広がりはもちろんエリア的な広がりも必要です。点と点を結び、面として活性化していくことで地域全体が盛り上がる。印刷工業団地がある六丁の目だけで物事を考えるのではなく、仙台市東部エリア全域に範囲を広げてみると、卸町の皆さんとも一緒にできることがたくさんあると思います。

金野取締役/卸町東や仙台港の方まで巻き込んで、一緒にいろんなことができたらおもしろいですよね。
その一方で、卸町はまだまだ一般の方にとって近寄りがたいエリア。この地域をどう発信して、どう残していくか、組合の中でもいろいろな考え方がある中で、各社が納得できる案を考え実行していくことも大きな課題です。

今野/中小企業も考え方はそれぞれですから、これだ!という一本のベクトルを導き出すのは難しいですよね。
例えば、弊社では定禅寺通りのエリアマネジメントに関わらせていただいていますが、そこにも様々な立場・考えの方がいらっしゃいます。そういった多様な価値観が共存できるエリアにするためには、対話をしながらアクションを続けていくことが大切だと思います。議論するだけでなく、何か行動や実行をすることで、自然と人が集まってくることもありますから。卸町もそうやって前に進めていけると良いですね。

金野取締役/そうですね。御社は特に、学生や若い世代を取り込むのが上手だなと思います。卸町としても、お子さんや若い人たちと接点を持つための機会をいろいろと作ってきたのですが、なかなか継続的な関係構築にはつながっていなくて。卸町には専門性が高い企業や、全国の良い物を知っている企業が集まっているので、キッザニアのような子ども向けコンテンツができたらおもしろいんじゃないかとアイディアを練っているところです。
ほかにも、新卒採用に課題を抱えている企業が多いので、ユーメディアさんの発想力や発信力をお借りしたいと思っています。

今野/卸町も六丁の目もそうですが、仙台・宮城・東北は日本が誇るべきエリアだと思うんです。そこに訪れてくれる人やリピーターを遠くの地域からだけでなく、近いエリアや地域の中からも増やし、交流人口をどんどん生み出していきたい。
そのために中小企業が連携して前向きに取り組めたらと思っていますので、ぜひこれからもよろしくお願いします!

金野取締役/一社できることなんて、限られていますからね。私も、どれだけたくさんの企業と連携してできることを増やしていくかが大切だと思います。卸町も六丁の目もポテンシャルがある場所。ぜひ今後もよろしくお願いたします。

今野/今日は本当にありがとうございました。

金野取締役/こちらこそ、ありがとうございました。


今回の対談場所となった瀬戸屋ショールーム。対談後に、お邪魔した社員全員で食器をお買い物しました。
対談には、ユーメディアが運営サポートを行う学生向けメディア「COLORweb」学生編集部のメンバーも参加。
二人の話から地元企業の魅力を感じる機会となりました。


>>>株式会社瀬戸屋公式サイト

Credit

Creative Director & Designer/ 田向 健一
Interviewer & Writer / 澤田 朱里 COLORweb学生編集部 菊池 彩夏
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