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【vol.12】DXが描く「仙台・宮城」の可能性

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2年間取り組んだ「ユーメディア版DX」から、
その先を描く

今野/お久しぶりです。高谷さんのDXに関するインタビュー記事を拝見したり、大学講師をご担当されることになったニュースなどをお聞きするたびに、お会いしてお話したいと思っていました。今回お忙しい中、このような機会をいただき大変うれしく思っています。実は2年前から「ユーメディア版DX」としていくつかの取り組みをはじめていて、本日はそのご相談もかねて伺った次第です。具体的には、営業のデータ化+見える化MA(マーケティングオートメーション)スマートファクトリー、この3つをプロジェクト的に立ち上げて、メンバーも少しずつ集めてやっているところです。リテラシーやマインドを高めて、主人公になる人を増やしていったうえで本来のDXにつなげていきたいと考えています

高谷氏/こちらこそご無沙汰しておりましたので、このような機会をいただけたことに感謝します。DXに関して、御社では3つ具体的にやるべきことを整理して実行しているのですね。

今野/実際はDXと言えないレベルの内容ですが、小さな手ごたえはあります。隣に座っていながら同じような企画を作っているというような状況は変えていきたいであるとか、情報を共有化するために必要なことなどを、あの手この手でいろんな人が発信を続けて意識や行動は変化しているというところです。

髙谷氏/我々も似たようなことがあります。IT屋だからといってDXが進んでいるかというと全くそういうことは無く、中小企業共通ではないでしょうか。ドキュメントを共有してプログラムしたものを部品として活用するなど、社内での開発のペースを早める工夫が必要というところはまさに同じです。
そして個人的には何をDXとするかが重要だと思っていて、総務省「令和3年 通信白書」にあるDXの定義(※1)から主語と述語だけを抜き出すと「企業が競争上の優位性を確立すること」となるんです。競争上の優位性を確立するために“データとデジタル技術確立”を目指せばいいので、今おっしゃったようなこともDXになります。「それは競争上の優位性に繋がるのか?」というところが確認できれば良いのであり、本質的には会社を変える部分が DXなんでしょうけど、デジタイゼーション(※2)とデジタライゼーション(※3)いずれも立派なDXなので、どこの視座にするかなのでしょう。「これで会社を変える」ということが根本にあればそれがDXと言えると私は思っています。

※1 総務省「令和3年 通信白書」デジタル・トランスフォーメーションの定義
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html
※2 デジタイゼーション/デジタル技術を活用し、自動化やデータのデジタル化などを行う。

※3 デジタライゼーション/デジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変革。新しい価値を生み出す。

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経済産業省(2018)の定義(※1)

今野/本来あるべきDXの形をいきなり方針として出したり、アクションプランに落とし込むのは難しいと思っていて、「ユーメディア版DX」という表現を使って進めてきました。
その先の、本来やりたいDXというものも3つあり、ひとつはすでにある仕組みやスキームを活かし、受発注の段階でウェブを大いに活用した、人が介在しなくても生産できるような新たな商材を開発すること。スマートファクトリーの先にある姿として描いています。
また、我々とお客様、紙屋さんなど限られたところから、地域、町内会、子どもまで広がってきているステークホルダーを活かしたい。社員ひとりひとりが持っている情報から、思いがけない未来に繋がる可能性があると感じています。
もうひとつは、自社媒体でもある、コミュニティサイトの約7万人の会員と作ってきた成功モデルの活用です。大変アクティブなユーザーも多く、こちらの投げかけに大いに応えてくれるので、マーケティングデータとしてお客様のお役立ちに活用できています。そして、このマーケティングデータを提携している会社が活用して、さらに地域が活性化することが、次の展開ではないかと思っています。

髙谷氏/弊社は現在ビジネスインテリジェンス(※4)に取り組んでいて、集まってきたデータを使って新しい価値を生み出すことにトライしています。具体的には、大学内の複数部門のアンケートを集め、新しい教育活動に活かすなどです。これがDXの次に来ると思い、今まさに動きだしているところです。

今野/データ化したり集約するだけでなく、その先に活かす取り組み、興味深いですね。

※4 ビジネスインテリジェンス/蓄積されたデータを分析、可視化し事業の意思決定などに活用する。

DX人材を育てること、
中小企業のDXを進めること

髙谷氏/弊社は業務系のシステムウェアの開発を主な業務としていますが、我々は経験値から提案するスキルで仕事をする力を高め続けてきました。DXではクライアントのビジョンをゼロから形にすることが求められます。
実はDXを進めるのはIT人材よりもユーメディアさんのようにゼロから作り上げることを普段から考えている方々の方が得意なのではないかと外から見えています。事業も印刷、出版、イベントなど多様性がありますよね。我々は人材も変わる必要があり、仕事はあっても人がいないという状況もしばらく改善しない。新たな視点を入れなければと模索しているところです。

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今野/弊社の事業展開がDX人材に通じる所があるのでないかという話しをいただいて嬉しい思いです。DXにうちが取り組む意味をそこに絡ませて展開できるのでないかと感じました。

髙谷氏/おそらくIT業界は同じような思いの企業が多いと思います。
中小企業の現状については、DXに取り組むにあたって根本的に予算がないという問題があり、進めることが非常に難しく、デジタル化から手を付けるしかないというところがあります。例えば業務フローを見直したり、棚卸・整理するということはそれほど費用がかからない。またホームページがないところが52.3%という実態もあるのでここから手を付けてもいい。その上でDXのご相談が受けやすくなるとお伝えします。経営者が描く「ありたい姿」と会社の「あるべき姿」が一致していて、その上で「DXでどうなりたいか」がある企業は上手くいきますね。ITの専門家に依頼してDXができるということではないので、そのあたりを理解して頂きながら丁寧にやっていく必要があると感じています。


互いの強みを持ち寄って、
生み出せる新しい価値

髙谷氏/御社の工場は5年ということで、そろそろ落ち着いてきているのではないでしょうか。

今野/動線を活かし切った仕事ができるようにはなってきたと感じています。

髙谷氏/私が興味を持っているのはユーメディアさんの営業のDX。むしろ御社で持っているゼロから生み出す力を欲している企業は多くあると思うので、何かカリキュラムがあったら需要があるのではないかと思います。

今野/弊社の地域ブランディング事業部ではまさにゼロからやっていて、地域の課題解決に使える補助金の話なども含め、自治体、事業者、市民の皆さんと対話を重ねながら事業として起こし、展開していくというのが得意分野です。仙台市や宮城県に固執するものではなく、東北全域に広げている状態で、各地とのやりとりがあります。先ほどお話した本来やりたいDXの3つめのように、デジタルの力を上手に使いながら全国的に横展開していくのもひとつの道なのだろうと思っています。

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髙谷氏
/それであればエリアを日本に限る必要もないですね。

今野/現状で可能なのかと言うと改めて検証が必要ですが、地元で仕事をすることに誇りを持っているからこそ、他地域のブランディング事業にもお役立ちでき、そこで新たな知見を得て地元にも還元できる。このような循環していく考え方に会社も私も前向きです。コロナによってオンラインミーティングが浸透し、物理的な距離を感じなくなってチャンスが増え、お客様が広がって来たことも大きかったですね。

髙谷氏/弊社とユーメディアさんでやってみたいこととしては、例えば高齢者向けのイベントなどこれまで告知や申し込みを紙ベース、ファックスや郵送などで行ってきたもの。小さな文字が読めない、電話に出ないなどの課題もあり、運営に関わる高齢者ご自身がウェブで何とかできないかと考え始めているような案件です。まだまだこういうものがいっぱいあって、我々が作るだけだったらすぐにできるのですが、これに付加価値を付けて全国に広めるとしたらどんな方法があるかなと思っていまして。

今野/そこをゼロから考えるということですか。

髙谷氏/そうです。こういうのとか地域を盛り上げ、収益にもなるようなものを一緒にできたら良いなと思っていました。そしてやはり、物事を白紙の状態から作り出すようなメソッド、定型ではたどり着けない時にどのような思考をしたら良いのか。そういった研修、講座、カリキュラムがあると非常にありがたいですね。

今野/具体的でもリアルでもなくて恐縮なのですが、例えば同じようなプロセスや同じやりとりをしても出来上がる形や打ち手が違ったり、納めた後の展開を共有して次に何をするかという面白みだったり、物事が循環していくようなことをどう見れるかということ、定型の販売ではない大変さの中に喜びを見いだせるかというあたりが分かれ道だよということは、採用の際などにもお話しします。
結果そういうことがやりたい、自分のやりたいことと合致しているという人が入ってくれるから定着するし、成長も早いのではないかと思います。やりたいという思いから始まる課題解決、自分がやってこそ出来上がる形など、そのようなことを楽しめるかどうかなのではないかと思っています。ユーメディアだからこそできるDXがあるのではないかという思いもあります。それは自分達だけでできるものではなくて、ITの分野で知見を持っている皆さんと連携をしながら共にDX人材づくりだったり、DX推進を志していければ良いと思っています。


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髙谷氏資料より抜粋(DXに向けた地域企業の十分条件)


髙谷氏/DX人材ってIT会社だけだと作れない。求めている企業に対して、一緒にDXを提案するとしたらどんな組み方をしたら良いかということをやってみるのも面白いと思いますね。

今野地域の振興・活性化に繋がりますね。この地にある会社だからこそできることがそこにありそうです。

 

DXで起こせる変革、
仙台・宮城の可能性

今野仙台と言えばDX先進地域だよねとか、AIを使ったビジネスシーンが増えているよねとか、そんな話題が増えることを目指していければよいのではないかと思っています。

髙谷氏/それぞれがありたい姿を叶えることで企業という枠を超え、そのような状況も作っていけるはずです。時代の変化が加速していてDXしないと課題解決できないと言われていますが、そこに問題が無くなればもっと時間をかけてもかまわない。ひとつの動きとして、雇用の流動性というのが気になっていて昨年はうちでもだいぶ退職者が出ました。同業他社、大手に聞いても状況は同じだと言います。この動きは止められないと思うので、うちとしては当社に在籍していたことがその人のステイタスになるようにしなければと感じているところです。地域での発信を実現する手前に、会社として選ばれるようになること、IT人材からDX人材という変容を可能にして多様な提案ができることを目指したい

今野/仙台がDX先進地域になるよう努力を続けていくけど、それって完全に印刷物が無くなるのかっていうと逆だと思っていて、そういう地域だからこそ必要な印刷物が存在感を持つのだと思います。だから印刷の工場を建て直したし、そこに繋げたいんです。心を持って印刷を続けるのはそういう意味なんだよとうちではよく話します。必要な印刷物まで無くなろうとしている時代、チャンスだよと。DX先進地域となることで、本来あるべきツールの存在感が際立ってくると信じて頑張っていきたいという思いです。

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新設した株式会社ユーメディア本社印刷工場(2018年10月竣工)

髙谷氏/宮城に枠を広げると、今取り組んでいるものとして水産DXがあります。うちは元々水産が得意で。IT屋さんって一次産業好きなんですよ。土を触ったりだとか興味があって。
今一次産業をITで変えるとしたら私は最後のチャンスかなと思っていて、なぜなら漁師さんたちや農家さんたちも高齢化していて後継者がいない中、ここをなんとかできたらうちはうちで新たな取組みが広がるし社員にとっても面白い事をやっていると思えるし、ITの力で一次産業をなんとか支えられるということがあると思うので、紙で残すのと一緒のような気もしますね。データで残すのではなく、リアルな物に貢献できているんだという地に足のついたエンジニア会社になれるチャンスでもある。本来あるべきものを取り戻していくことを「変革」としてやっていきたい。

今野/現状の一次産業は経験や勘に頼る面が大きいかもしれません。
この時期に絶対釣れるとか、風が西から吹いてきたから大漁とか。そういったこともデータをとってより確実にもできるでしょうね。

髙谷氏/物に貢献できるというか、物として産業に貢献できるというのはリアリティありますよね。

今野/震災の時、うちの会社って必要ないのではないかと悩んだことがありました。衣食住がままならない中、コミュニケーション支援の会社ってどのような価値があるだろうと思ったんですけど、やっぱり必要な情報がないのはダメだし、お客様が持っている情報もしかるべき人に届けなければいけないと考えると必要な会社だなと思えたことを思い出します。ITとなるとどうしても無機質なイメージに感じるけど全然そうではないということですよね。

髙谷氏/そうですね。先にリアルがあることが見えていれば、ITで大いに変化を起こせると思う。そのような変革に繋がることを仙台・宮城のDXとしてぜひやりたいですね。

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髙谷氏資料より抜粋

 

対談を経て
株式会社ユーメディア ITコンサルティング室 DX推進担当 西塚 一哉

ITのスキルだけじゃなく、アナログ的とか、ゼロから作るとか、そういうところの得意な分野との融合が必要というお話について、僕ももともとI Tの会社からユーメディアに入って、ITだけじゃないんだと感じていたので、改めてそのあたりを認識させて頂いた。今後もし可能であればこのご縁もありましたし、先ほど髙谷さんがおっしゃっていたような一緒に何か組んで提案したり動いたりして、プロトタイプというか骨組みというか何か作ることができれば、地域に対するひとつの根幹になる、元気にする、また、御社の面白い会社というコンセプト、地域を元気に面白くするというような融合もできるのではないかと感じた。

 

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写真左:ITコンサルティング室 西塚 一哉 中央:株式会社エヌエスシー 髙谷 将宏氏 右:株式会社ユーメディア 今野 均

 >>>株式会社エヌエスシー公式サイト

Credit

Interviewer&Writer/扇 かおり
Photo/森谷 遼太郎
Direction&Design/田向 健一
対談を経て/ITコンサルティング室 西塚 一哉

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